見て歩き:金田一好平のアートルポ



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金田一好平のアートルポ/第12歩

●みんなが自分の仕事をすることの大切さ

展覧会名:東日本大震災チャリティー企画 Art to Heart
会場:表参道ヒルズ・ギャラリー80
会期:2011年4月12日〜4月17日

 先日テレビで、震災後にショックで歌えなくなった被災地出身のシンガーの話をしていました。 あの惨状を目の当たりにし、「この現実に対して音楽が出来ることなど無いじゃないか」と、 無力感に襲われたのだそうです。しかし訪れた避難所の人たちに「歌って欲しい」とねだられ、 戸惑いながら楽器も音響設備も何もない体育館で、被災者が車座になったなかで歌っている姿が印象に残りました。 シンガーは物理的には無力かもしれないけれど、歌を必要としている人がいます。 だったら、シンガーはその人の為に歌を歌うべきでしょう。まさに、美術もそのようなものなのではないでしょうか。 「瓦礫をどかす力も必要だけれども、瓦礫をどかす人を支えることも必要」と、最近思っています。不急な事であるのは承知の上ですが、 いまはシンガーは歌を歌うこと、ぺインターは絵を描くことが一番良い選択なのでしょう。

銀座は、3月中は閉まっていた画廊も多かったのですが、4月になってからはほぼ通常どおりになっているようです。今後はあちこちでチャリティー展が企画されているようですから、皆さんにも多くの案内が届いている事と思います。先日、私もそんなひとつにいってきました。売り上げの一部は日本赤十字を通じて被災地に寄付されるわけですが、売れる、売れないにかかわらず、やはり作家は作品をみせて、疲れた人の心に少しでも潤いを持たせることが大切なのだと思います。参加作家は50音順で、阿部清子、岡野陽一、高崎昇平、平野健太郎、藤井美加子、水口和紀、室井佳世、横山芳実。横山さんの発案とのことですが、よく皆さん揃ったものです。


銀座と違うオシャレ感が新鮮な、表参道ヒルズ。



左から、平野、室井、横山、岡野、藤井、水口、阿部、高崎。発表が迫っている人、震災で発表を断念した人、みんなそれぞれに大変ななか、ホントに頭が下がります。



打ち上げに駆け付けた皆をいれて。前列右端は、長期間海外でギャラリストとして(?)修業を積んできた藤原小百合さん。これからビシバシ暴れるのでしょう。不用意に近づくと噛みつかれます(笑)。






●スーパーマンは存在する

展覧会名:都市の肖像+reflections‐岩波昭彦展
会場:上野の森美術館
会期:2011年4月20日〜4月24日

 院展所属の岩波昭彦さんの大型展覧会。岩波さんは、同世代の院展作家の中ではかなり活発な発表を続けている 作家です。最近は院展作家でも個展が多くなりましたが、それでもこれだけ大きな展覧会をする人も珍しいでしょう。 エネルギーも凄いわけです。今回若干の旧作はありますが、ほとんどはこの企画にあわせて制作されたものだそうで、 構想1年半。こう言ってしまうとありがたみが減るような気もしますが、このスペースを埋める大作をそのあいだに 制作してしまうのですから、やはり化け物級です。作品は、岩波スタンダードのマンハッタン摩天楼の「都市の肖像」 シリーズと「Reflections」というアンフォルメルの熱いシリーズ作品を柱に、合間にいれた雨に濡れる石畳やアス ファルトの中品がいいリズムを作っています。これがないと、ちょっと重すぎたかもしれませんね。ひときわ大きな 作品に2011年と制作年が入っていましたが、こりゃすごい。それと、夕刊フジで連載された「井沢元彦の再発掘人物 日本史‐幕末動乱編・坂本竜馬」などの挿絵101点をギャラリーで同時開催しました。新聞の挿絵はいかにも大変そう。
 院展への出品も、Reflectionsも、挿絵もすべて岩波さんであって、決して院展出品の余暇にやっている事ではない「本気」を感じさせる展覧会です。これだけたくさんの引き出しを持って、しかも美術記者会会員って、ちょっとズルイ感じもしますが。








会場を知ってる人なら巨大さが解るでしょう。摩天楼作品をみていると、ニューヨークに憧れる気持ちも解ってくるような気がします。同世代だから?






今週の日常: 「散歩」

 
 八重桜もそろそろ終わる頃、あまりにヒマなので、近所を散歩してみました。
 私が住んでいる場所のすぐそばを、野川という多摩川に注ぐ小川が流れており、ここは絶好の散歩コースになっています。管理が都なのか調布市なのかよく知りませんが、堤防の内側に自然の川縁を残してくれているので、好きな人は毎日散歩しているようですし、植物も種類が多く自生していますので、近所にはノビルや菜の花を採ってくる人も結構います。私も、セリをみつけて食べたことがあります。
 そんな野川に自生している植物の中に、クワがあります。そう、蚕を育てる桑の木です。調布という町の名前自体もそうですが、この付近には他にも布田、染地という地名があり、古くは繊維関連の産業が盛んであったと思われますが、クワもその名残なのかもしれません。近辺にあった畑から実が運ばれて定着したのだと思いますが、クワは野川沿いではかなりポピュラーな植物です。先日散歩をしたら、このクワの実が今年は大豊作!毎年全ての木が実をつけるわけではなく、たいがいの年は3~5割程度の木しか実をつけません。ところが私の感想では今年は8割方の木が実をつけています。これも震災の影響でしょうか?ほかの地域はどうなんでしょう。
 いずれにせよ、5月後半頃には黒く色づいて食べごろでしょう。軽く砂糖を加えて煮詰めてからヨーグルトに入れると美味しいですよ。
八重桜は派手ですね。これも塩漬けにして……。
今はまだ緑ですが、だんだん黒くなって食べごろになります。私の田舎ではめったに見ませんでしたので、なぜか嬉しい。
菜の花にいたカメムシ。ナガメというらしい。どうせならもうちょっと可愛い虫を載せたかったのですが、この日はコイツばっかりのさばっていました。まぁ、こんなシーンを撮っていながら失礼な発言ではありますが。菜の花を採るにはもう遅い。
こちらはカメ。野川にはやたらといます。撮影に成功した事はありませんが、カワセミやコサギもよくみかけます。

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    ●「相撲は魅せなきゃダメでしょ」木村浩之の相撲展
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    ●「みんなが自分の仕事をすることの大切さ」東日本大震災チャリティー企画
    ●「スーパーマンは存在する」岩波昭彦展

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    ●「老舗の画廊にまかせるの?」小滝雅道展

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    ●「やっぱ京都でしょ?」西嶋豊彦個展

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    ●「海が好き!」内山徹日本画展
    ●「寂しがり屋の猫」能島千晴展

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    ●「屏風は平面じゃない?」岡村桂三郎展
    ●「母は強し!」藤井美加子日本画展

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    ●「まだまだ変わってゆくのかな?」寺久保文宣油絵展
    ●「やったもん勝ち」MetaU

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    ●「大人になると落ち着くんだな」菱山裕子展
    ●「カワイイ!って、俺がいってもな……」手の上の渺渺展

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    ●「パンクのエネルギーって、これなんだ!」石塚桜子 ポートレート・ビュー
    ●「新宿高島屋チョイスは一味ちがう」波高會
    ●「受賞者の今後の活動に注目します」第45回昭和会展

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