怪しげな生物シリーズ(私が勝手にそう呼んでいる)の最新作は、「タコ」(作品のタイトルではありません!)。いままでの作品もそうですが、存在感抜群です。眼ヂカラがはんぱじゃない。蹲る怪物が、また創られたのです。森田画廊のミニアチュール展(3/19〜4/3)に、「蛸」という小品が出品されました。
展覧会名:藤井美加子日本画展
会場:銀座 ギャラリーミリュウ
会期:2010年3月8日〜3月20日
もう一か所、気にしなければいけないのが、この展覧会。藤井さんとは、付き合い始めてほぼ20年になるみたいです。今回の作品は、今までとはちょっと違って、不思議な言い方ですが、「絵がひろくなった」感じがします。水をテーマにした作品が多く、モティーフのせいもありますが、たぶん構図の工夫にポイントがあるのだと思います。ハスの配置や棚田の空間に余裕が感じられるのです。「そう?」なんて本人は言っていましたが、もし本人が気付いていないとすれば、息子にだんだん手がかからなくなって、気分的に余裕を取り戻したのかな?もっとも、彼女は昔から貫禄充分(10年以上前だけれど、夜中に電話で呑み屋に呼び出されたことがある)で、最近は近所の子供に「コワイお母さん」で通っているらしいから、筋違いかもしれません。失ったものを取り戻したのではなく、「子供を育てた女性の強さ」を獲得したということですかね?来客の途絶えない会場は、そんな彼女の人間的魅力を現していたのでしょう。話をするのも、間が悪いとしばらく順番待ちになりかねません。作家活動というのは、絵は良くて当たり前で、プラスαがやはり強みになるんですね。
やれ日光だ、広島だと言われていましたが、スケッチは日本中で行ったようです。ハスの葉の位置が味ですね。
藤井さん(右)と、画廊の佐伯さん。佐伯さんは残念ながら、この展覧会が最後の仕事になりました。でも、私と同じで、この業界からは離れられんだろうなぁ。また呑もうね!
今週の一杯:
3月19日、東京都美術館で芯の疲れる仕事を終えて、観たかった等伯展に行こうと思ったのですが、何せ相手は等伯です。インターバルを入れたくて、文化会館のテラス(私は煙草を喫むので、この場合は外)でコーヒーでも……。と思って入ったら、白人の観光客らしい男性が、うまそうにビールを飲んでいます。いくら暖かくなったとはいえ、陽も弱くなった午後4時近く。花見の客だってまだいやしない。けれど、私の心のどこかに火がつきました。安物のコートで北風に立ち向かう心意気!冷たい風に負けず、テラスで冷たいビールを呑みながらニッコリ笑う心意気!白人男性のすぐそばのテーブルに座り、こちらも一杯。残念ながら、彼とは違って金髪は隣にいないけれど、なに、すぐそこに松林図屏風が待っている。
ビールと煙草ですっかり元気を取り戻した私は、いざ東京国立博物館へ。交番の角を曲がって、ふくらみかけた桜の下を軽い足取りで……。と、そのとき聞こえたアナウンス。「長谷川等伯展は、入場まで50分待ちとなっております…。」渡りかけた信号をあわてて戻って独り言。「50分?お銚子3本いけるじゃないか!」
まあ、一時間後は、銀座で仕事をしていましたけどね。いや、ホント。
注文してすぐに撮影すればよかったのですが、呑んじゃいました。