ギャラリートーク風景。司会の立島さんは、打ち合わせの時に「ぼったくりバーにつかまって虐められている気分」だったらしい。因みに、私はレセプションの日「魔女の集会に出掛ける気分」でした。辞書によるとglamourには、魔力、魔術という意味もあるそうですから、やっぱり……。文句は講談社に言ってね!
展覧会名:山本雄三展
会場:日本橋三越
会期:2010年5月26日〜6月1日
このコーナーに私の似顔絵を描いてくれた山本君の新作展です。モノトーンが目立ちますが、最近意識的に色彩を削って、描きたいものを絞るというか、本質を見つめなおしたいという話をしていました。高校時代はピッチャーだったという山本君。なかなか直球勝負です。
今回だけではないのですが、個展に「子供ネタ」が多いのが彼の特徴です。意外に思う方も多いかもしれませんが、彼の場合独立展出品作や美術誌で紹介される作品は女性像が多いのですが、個展になると母子像や子供の作品が出てきます。今回は特にリクエストが多かったということです。いままで業界の一般常識では、「子供をモデルにすると売りにくい」ということがありました。もちろん例外はあって、岸田劉生の礼子像はともかく、今でも活躍している作家では、大津英敏さんや、智内兄助さんは子供ネタで有名になった作家です。もっとも彼らの作品の魅力はそれぞれ違いますし、山本さんの作品の魅力はまったく別種のものです。では、どこに魅力があるのでしょう?
安直に考えると、確かに「他人の子供の絵を飾ってどうする?」という疑問はありますが、子供の姿というものは、それだけで周りを朗らかにしてくれる効果があります。もちろん自分の子供なら一番よいのですが、我が家の様に中学3年にもなると、体はでかいし、憎まれ口も得意です。その点、小さな子供はどこの子供であれ、思わず微笑みかけたくなります。優しくならないといけないと思っちゃうのでしょうか?まさしく、「優しくなければ生きている資格がない」ですね。話がそれましたが、そのように、優しさが欲しい時、ふと、彼の作品があればいいなと思う人が多いのかもしれません。
残念ながら私は彼の子供と会ったことはありませんが、想像では作品中の子供とはちょっと違うと思います。個性を中庸(?)にしておかないと、「他人の子供…」と思われかねないからです。普通、個性に乏しいモデルの作品は観ていてもピンとこないものですが、リクエストが多いということは、充分魅力的に仕上がっている証拠です。そのあたりが、今回の彼のテーマである本質を見極めるということと、深く関係しているといえるかもしれません。
女性像は、もちろんたくさん出品されています。これはメインの作品。
どうしても、ガラス(またはアクリル)が入っていると、写り込みが避けられません。これは会場で鑑賞する際にも気になるところです。女性像の両側は、花の作品。
●いつまでもアンテナを磨いておいてね
展覧会名:後出 恵 個展「o-rai」
会場:京橋 GALLERY b.TOKYO
会期:2010年6月7日〜6月12日
最近、京橋の警察博物館の横を入ったあたりの隣り合ったいくつかの画廊が、お気に入りです。ギャラリー羅針盤、ギャラリー青樺、そしてギャラリーb.tokyo。理由として、この辺は画廊のスタイルもありますが、初個展や、せいぜい2回目といった作家が多いこと。ここ数年、私自身が以前から知っている作家の展覧会を中心に観て廻るのに一生懸命で、新しい作家を探していないことに気がつき、反省している次第です。もうひとつ、画廊が隣同士で張り合っている感があります。「あっちがああなら、こっちだって!」みたいな感じです。先ごろまでこのひとまとまりの中心にあって、不幸な終わり方になってしまったギャラリー山口を悼むかのような熱の入れ方というところでしょうか?
さて、そんななかにあって今回見つけた作家はこのひと。後出(うしろで)さん、と読むのだそうです。生活空間に屋外や道路が混ざり込んで不思議な空間を作っていますが、じっと観ていると、彼女は「居場所」を探しているんじゃないかと思いました。ほのぼのとした作風ですが、なかには妙に寂しさを感じさせる作品もあります。美大で深夜まで作業を続けての帰り道とか、自分が寝ているベッドの周りを流れてゆく様々な思い出や事象。「これからどうなっちゃうんだろう」とか、「私は何をしたいんだろう」とか、二十歳くらいに誰しもが悩んだのであろう事柄が観て取れます。感傷的にすぎるかもしれませんが、「彼女が本気で悩んだ末に現在があって、しかも未だに居場所を探してこの作品を描いたのだ。単に『カワイイから』ではないのだ」(バカボンパパ風?)と、勝手読みをしました。もし、この勝手読みが許されるのであるならば、このような作品は、たぶん彼女も現在しか描けないでしょう。このような作品はアタマで考えても出てくるものではないからです。けれど、もし彼女が現在のアンテナを保つことができたならば、また、全然ちがった素敵な作品を描いてくれるに違いありません。私たちはそれを願うしかないのです。だからって、「いつまでも悩んでいろ!」って言ってる訳じゃぁありません。
武美出身だそうですが、多摩美や造形だって似たような環境です。みんなこうして夜道を帰ったんだなぁ。
単にカワイイ作品では感動がないのですが、かといって全ての作家の人生や青春を知る訳でもなし。ホントはいろいろ裏話があるのでしょう。それはともかく、相変わらずの写真で申し訳ない。
今週の一枚:
Sergio Mendes & Brasil ’66 Live At The EXPO’70
梅雨入りしちゃいましたが、先月くらいから天気の良い日は窓を開け放して、ラテン系の曲をよく聴いています。とくにコレ。有名な曲ばかりですが、なかでも私はマシュ・ケ・ナーダが大好きです。カッコイイんだ、これが!
このアルバムはタイトル通り、’70年の大阪万国博覧会に招待されたセルジオメンデス&ブラジル’66が万国博ホールで演奏した実況録音。日本語で「モウカリマッカ?」と挨拶するセルジオ・メンデスが、おちゃめ。
私は当時小学2〜3年生だったと思います。カブトムシにしか興味がない子供でした。「20紀少年」でも、夏休みに万博に連れて行ってもらえなかった少年の話がありましたが(話の内容をよく思い出せないけど)、私の記憶の中でも、なぜか万博と夏休みがだぶります。私がカブトムシを追いかけていた頃、こいつらはこんなスゴイ音を出していたんだと思うと、感慨深い訳です。もちろん、前回紹介したコルトレーンなどはもっと昔の録音ですが、「大阪万博」といわれると、突然リアリティーがでてきます。「あぁ、あのとき……」。もっとも、録音日は4月5日ですから、もっと涼しかったのでしょうけれどね。